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小惑星 2000 SG344 について

                              2000.11.05
                 吉川 真(宇宙研/日本スペースガード協会)

◎以下の文章は、11/4および11/5にメールで流れていました情報をまとめた
 ものです。

国際天文学連合(IAU)とNASAは、2000年11月3日に、小惑星2000 SG344が、
2030年9月21日に地球に衝突する確率が1/500であると発表した。これは、衝突
予測の確率としては、かなり大きな値である。

小惑星2000 SG344は、2000年9月29日にハワイのCanada-France-Hawaii 3.6m
望遠鏡によってDavid J. Tholen らによって発見されたものである。絶対等級
が24.6等と見積もられているので、小惑星だとするとその直径は30m〜70mと推
定される。ただし、その軌道は、地球の軌道に非常に近いもので、10月25日の
MPEC(Minor Planet Electronic Circular)の発表では、軌道長半径が0.98AU
軌道離心率が0.067、軌道傾斜角が0.11度である(公転周期は354日)。したが
って、地球から打ち出されたロケットの可能性も高い。もしロケットだとすると
全長は15mくらいと推定される。なお、ここでの軌道は、Tholenらの観測に加え
て、1999年9月15日のLINEAR望遠鏡によるデータも加えて算出したものである。
ただし、このLINEARのデータは1晩のみのデータであり、誤差が大きい可能性が
ある。

ロケットであるとすると、1971年前後に打ち上げられたアポロ計画のロケット
(Apollo 8-12)である可能性が高い。その理由は、現在地球のそばにありそし
て今から30年後に地球に接近するということは、逆に30年前にも地球のそばに
いたことになるためである。

また、仮に衝突が起こるとすると、小惑星の場合には1908年のツングースカ大
爆発レベルの現象が起こる可能性が高い。また、ロケットならば、地球に衝突
しても大気圏で燃え尽きてしまうため、被害を受ける可能性はない。

ところが、このIAUの発表の後で、さらに過去の観測が発見された。それは、
1999年5月17日のCatalina Sky Surveyによるものである。このデータを加え
て軌道決定をしたところ、2030年における接近距離は、0.0346 AU (接近する
時刻は2000年9月22日 22.19時UT)となり、衝突を心配する距離ではなくなっ
た。