再構成版 日本一周徒ほほな旅
第4回:まずは長野県脱出。
4月21日。今日は休息日。8時半まで爆睡。朝メシを頂き、佐藤が学校に行くのに合わせて活動開始。
佐藤の自転車を借りてまずはお買い物へ。何日ぶりかで自転車に乗る。スピードが違いすぎて感激。
国道18号方面へ、問屋スーパーにて食料を買いだし、靴流通センターで次の靴を物色。今はいているの
は中学生の時に買った赤いランニングシューズ。使い込んでいるわけではないが、年月は経っているので
この3日で早くもつま先付近が破れかかっている。履きやすく歩きやすそうな「ウォーキングシューズ」なる
ものがあるが、1万円近くするので当然パス。1950円のいわゆる「運動靴」を購入。まずは安いのをはきつ
ぶす作戦だ。もうお昼。工学部キャンパスに行き、生協の食堂で定食に野菜の単品攻め530円投資。満腹
につき生協前の広場のベンチで昼寝。15時を過ぎ、肌寒くなってきたので、佐藤のアパートに帰る。
夕方、佐藤が帰ってきて晩飯はパスタ山盛り。食べ終わり、さてコミパルでメールでも打とう・・・あれ、動か
んぞ。電源は入るのだが、タッチパネルが全く反応しない。反応しないので初期化もできない。小突いても、
恫喝しても動かない・・・。
ちなみに、今回の旅では、自分が旅日記を書いて、友人galiyaにメールで送り、彼がそれをホームページに
アップしていく、という計画である。まだ携帯電話にメール機能はなく、携帯電話に接続した手のひらサイズの
端末でメールを書いて送受信、というものであった。その端末には何種類かあったのだが、シャープの出して
いる「コミュニケーションパル」というのが、折りたたみ式で小さいながらキーボード付きだったので、これを採
用したのである。
仕方ないので、galiyaに電話。「コミパル動かんくなったけど、どないしょう?」「まじっすか?じゃあ、今から
取りにいきますわ」。などとやりとりしているさなか、今度は、佐藤と同級の自転車競技部員、ちーぼーが上田
から遊びにくる。差し入れのビールでとりあえず乾杯!21時半頃、galiya現る。コミパルいじくるもやはりだめ。
「これ、預かってって、修理出しますわ。ばっちり保証期間内ですし。で、保証書は?」「保証書・・・、あ、三重の
実家や」「ええっ、持ってないんすか〜」。仕方ないので実家に電話、親父様に。galiyaの家へ保証書郵送をお
願いする。galiyaがビデオを持ってきていたのでみんなで鑑賞。ゴールデンのニュース番組だ。自分の紹介が
「たにぐち青年」なのが何かおかしい。しかも10分くらいの尺がある。こんだけ流れてれば、そりゃ、手も振って
もらえるわけだ。galiyaによると、ホームページのアクセスも急増中のよう。1j時間ほどで2人が帰り、こちらも寝る。
4月22日。7j時半起床。1日休んだせいで荷物のパッキングに手間どる。9時、ひとまず自転車で工学部へ。
佐藤の研究室にお邪魔し、パソコンを借りて、コミパルが壊れて電子メールが使えなくなったことを関係者に
報告。10時、佐藤と別れ、工学部広場へ、大学の「貧乏旅行同好会」(←たにぐうが大学院の3年間在籍した、
バックパッカーの集まり)の後輩Tinaが激励に来てくれ、差し入れにイワシ缶をもらう。佐藤のアパートに戻り、
11時、出発。川沿いに県庁方面へ。マルコメみその桜が満開だ。
県庁を通り、国道406号を東へ。コンビニでバターロール6個入りとヨーグルトを買い、昼飯。国道18号に
出てずんずん歩く。車通り多く、郊外型店舗ばかりで単調。
もくもく歩いて18時。豊野町に入るところで、ABN取材班が合流。ディレクターの中村さんとお話しながら
寝床を探して歩く。国道117号に入ると田舎道。しかし、野宿によさげな場所はない。2kmほど進んで飯山線
の立ヶ花駅。駅寝も悪くはないが、テント張りたい。駅前の橋から千曲川を見下ろすと、対岸に広い河原と
そこに下りる道を発見。河原に下り、橋からなるべく離れたところにテントを張る。炊事の様子などもカメラに
収められ、中村さんからインタビュー。「旅にはもう慣れた?」「まだ野宿3日目なので、何ともです。野宿自体は
平気なんですけど、毎日寝床を探すのにまだ慣れないですね」。
中村さんからサトウのごはん3パックとカップ麺3個を頂き、取材班撤収。20時過ぎ。そのまま就寝。
4月23日。まずは撤収し、橋のたもとのガソリンスタンドへ。水をもらい、トイレを借りる。駅まで歩き、待合室の
ベンチで湯を沸かし、昨日もらったカップ麺を2個食う。かさばってバックパックに収まらないので先に消費。
国道117号を北上。田舎道で春霞み。今日はのんびり歩く気分だ。豊田村に入る。道ばたの鉄工所の前で
おじさんがたばこをふかしている。「おはようございます」「兄さん、歩きか?どっから来た」「松本からです。今日で
6日目です」「そうか、わしも若い時にはな、バイクで北海道一周したんや。まあ、ジュースでも飲みな」。おじさん
は鉄工所の前の自販機に硬貨を入れる。「好きなの押しな」。缶コーヒー選択。ピロピロピロ、あれ、当たりだ。
おじさん「お、ついとるなあ、もう1本持ってきな」。こんどはオレンジジュースを選択。おじさんに礼を述べて歩き
出す。
9時過ぎ、国道をそれ、湯ノ入温泉もみじ荘。受付のおばちゃん、巨大リュックに「どこから来たん?」。
話がはずんで、おやきを頂く。「歩きとは大変だ。ゆっくり浸かっていってね」。高台にあるので露天風呂から
は対岸の中野市や北信の山々を眺める。一緒になったおじさんが温泉好きで、「この辺だとあそこの温泉がええ」
など温泉談義。2時間ほど浸かり、出発は12時前。曇ってきて、雨がぽつぽつ当たる。雨、いやだなぁ。
国道は1車線になり、千曲川を眼下に森の道。時々スコール。風情はある。しかし、雨だと寝床に困るなあ。
飯山市に入り、7-11で休憩。15時。靴のつま先に左右とも穴があく。ここまでか。赤い靴にお別れを述べてゴミ
箱へ。おととい買った運動靴に交換して荷物を減らす。野菜が食いたいのでサラダと牛乳を買って食し、16時
出発。町中には入らず、堤防上の国道を歩く。そしてまたも脚&足の裏痛い攻撃。アスファルトは痛いので、堤防
の草の上を歩く。こっちのほうが衝撃が少ない。しかし、ペースは2km/h以下にスローダウン。気分も下降。
千曲川の河川敷は畑ばかりで、テントを張れそうな運動場やら公園がない。雨パラなので、屋根があると
楽だなあ。しかし、綱切橋、中央橋とも、大きい橋で、橋の下の空間が広すぎて、雨をしのげる感じではない。
ふらふら歩き、19時、そろそろ暗くなってきたところで大関橋。河川敷は林と畑。さっきの橋よりも河川敷と橋の
高さが低い。橋の脇を河川敷へ下り、橋の下に農機具などが置いてある横にテントを張る。雨もそこそこしのげ
そうだ。気分下降と疲れと足痛いで、メシも食わずそのまま寝てしまう。
4月24日。5時起き。周りは畑なので、農作業の人が来る前に撤収しよう。15分ほど片付けて歩き出すと、予想
通り、農業のおじさん次々現る。怪しまれないよう(十分怪しいが)、にこやかにあいさつして立ち去る。国道に
出るとすぐに7-11あり。牛乳とコーヒーを買い、店の前で昨日のロールパンの残りで朝メシ。掃除をしていたオーナー
さん「どこから?歩きか!どこまで行くの?」「とりあえず北海道まで行きます」「そうか、歩きだと、桜前線と同じ
早さだね。がんばって」。今日は栄村まで行くと言うと「じゃあ、観光用のだけど地図をあげよう」。野宿地探しに
役立つかもだ。
晴れてきた。気分もペースも上がる。9時過ぎ、地図にあったいいやま湯滝温泉に寄る。風呂は出てきたところで
入ることにしているので、朝から温泉でさっぱりする。1時間浸かると腹が減る。カップ麺食う。やはり朝は米を炊か
ないとだめだな。歩き出すとまた腹が減る。道ばたにヤマザキショップが出てきたので寄る。ロールパン2袋とプチ
トマトを買う。店のおばちゃんとお姉さんと話す。「どこまで行くんですか?北海道!私はこの前まで千歳に住んで
いたんですよ。がんばってください。またここを通ったら寄ってくださいね」。ええ、寄りますとも、当然ですがな。
若い女性に応援されて気分は絶好調。てくてく進む。
桑名川あたりから曇ってきて雨まじり。でも今日は朝もらった地図で道の駅で野宿確定なので余裕がある。
17時過ぎ。道の駅まであと1km、ゴールはもうすぐだ。と、向こうからやってきた車が僕の横で急ブレーキ!え、
何だ?車はUターンして戻ってきた。???「あらー、たにぐうさんじゃないですかー」。乗っていたのは、これまた
自分が大学時代から在籍する、社会人中心のテレマークスキークラブ、「信州テレ組」組員の安田さん夫妻。
3月末には組の例会で一緒にスキーに行っており、その時に徒ほほな旅のことも話していたので、見た瞬間に
気がついたらしい。今日は飯山の鍋倉山へ行き、栄村の知り合いの所へ寄って今から帰りだという。「今日は
どこまで?良かったら寝床探し付き合おうか?」。人の提案には乗るものだ。車に乗せてもらい国道を津南へ。
しかし、道沿いにいい感じの所は見当たらない。「車の速度で探すの難しいですね。さっきの道の駅でいいですか」
ということで、戻って道の駅さかえ。建物横には、公園にあるやつの3倍はある、豪雪対策仕様の巨大東屋あり。
これはいい。直売所をのぞき、安田さんからおやきとにんじんを贈呈していただく。ごちそうさまです。
安田さんを見送り東屋に陣取る。ベンチもテーブルも木製で大きい。野宿者的にはホテル同然だ。米を炊き、
もらったにんじんとわかめのスープ。落ち着いた野宿だ。犬の散歩に来たおじさんに話しかけられる。
「歩いてきたんか。歩きは偉いなあ。わしが免許を取ったころはな、30年くらい前やけどな、国道はまだ地道
やったし、村で免許持ってるの10人くらいだったんだ。ここはそれくらい田舎だったんだ」。おじさんに昔の話や
豪雪の話を伺いながらのメシ。「ここまで来たんだから、がんばって続けてくださいね」。
雨がしとしと降り出すが、ここは吹き込みもなく超快適。久しぶりに落ち着いた気持ちで眠る。
1999年04月21日 長野市安茂里(後輩のアパート) 停滞 晴れ|曇り 0km
1999年04月22日 長野市安茂里→中野市立ヶ花(千曲川の河原) 晴れ|曇り 20km
1999年04月23日 中野市立ヶ花→飯山市大倉崎(大関橋の下の河川敷) 晴れ/雨 23km
1999年04月24日 飯山市大倉崎→栄村森(道の駅信越さかえ) 晴れ|曇り 25km