東北大陸北上編  その1


   2005年8月4日午前4時。
   遠足前日の子どもなのは30歳過ぎても変わらず、寝不足のままフトンから這い出す。
  さっさと準備し、単車へ。前日に工作したベニヤ板特製荷台に、いつもの100Lザック
  をくくりつける。安定抜群。その上に45Lザック、三脚、ぞうり、シートに座布団、パッキングは早い。
  明るくなって薄曇り、5時過ぎ、走り出す。先は長いし、最初からハシャいでも疲れるので、
  70km/hでたんたんと、ガラガラの国道19号を流れていく。                       

   信号もほとんど止まらず、木曽に入れば弱い冷気が肌を刺す。。ますます川のように淀みなく流れる。
  しかし少し疲れた。上松のコンビニでおにぎりと即席みそ汁を買い、店のベンチに座って食う。
  そのまましばらくぼーー。7時半再出。                                 

   木曽路は緑の回廊。その中を特に考えごともせず、1時間で塩尻。夏の朝もやでアルプス
  は見えず。松本まではいつもは裏道なのだが、思考が停まっているのでそのまま19号へ。 
  通勤時間で混雑する。学生時代とだいぶ変わって店がいっぱいできている。時は流れた。 
  松本で給油。9時。少しえらいがまずまずのペースだ。                       

   ここからは徒ほほの道。走るの自体数年ぶりだ。雨の中振り返った「松本市」の看板に見
  送られて北上。しかしねむい。明科町で犀川橋の河原に吸い込まれる。記念すべき徒ほほ最  
  初の野営地を訪ねる。横の養鱒場ではトンビがニジマスを狩っている。徒ほほ最終日にテントを
  張った広場のトイレの陰に座り込み、  15分ほど休眠。ムシ熱暑い。                                        
   ここから長野までは、犀川沿いの山中を快適にワインディングする田舎の国道。学生時
  代には自転車の練習で、クルマで、時にはタイムアタック(爆)なぞやって、どのカーブが何キロ
  で曲がれるかまで覚えてしまった道。久しぶりで楽しいのだが、いよいよ眠い。こらあかん。
  山清路を過ぎて古坂の路側帯に単車を停める。そのまま歩道の縁石をベットに
  単車を日よけに、おやすみなさい。

      ぐーーーーーーーーーーーーーーー。


                  暑い。起床。よく寝た。
  30分くらい道端で爆睡したらしい。相変わらず、どこでも寝られる(^^;;

   再びチンタラと走る。動力だから、寝床は選べる。急ぐこともない。国道のカーブに身を
  委ねる。長野市に入り、昨年かその前年かに地滑りで崩壊したドライブインを見下ろす。昔地面
  だった所がごっそりとなくなっている。道の下をのぞくと舗装道路が粉々のビスケット状態。むう。
  地滑りおそるべし。

   長野市街は少し混むが、単車なのでそうストレスもない。国道18号から117号へ。ようやくのんびり
  田舎道。といきなりネズミ捕りがお出迎えしてくれるが、50km/hでタラタラ走っていたので無問題。
  千曲川を右下に見ながらの山道を楽しみ、飯山へ。12時まわり腹減った。コンビニでおにぎり1個と
  ヨーグルト買い、座り込んで食う。青空だが、雲が増えてきた。                   

   ここからはクルマほとんどいない超快走2車線路。千曲川を足下に山間田舎道が続く。栄村。久々
  で百合居温泉に寄る。農協の裏にプレハブ温泉小屋変わらず健在。石油臭プンプン。仮設小屋は風
  情がある。誰もいないのをいいことに、かけ流しのコンクリート床に寝っ転がり、トドと化す。
                            ああ極楽。

   1時間ほど溶ける。プレハブの前には緑の水田を風が渡る。向こうには山寺の立派な門。集落は雪
  国のごつい家。ニッポンの夏の田舎だ。風にあたってしばしたたずむ。

         


   10分ほどで道の駅さかえ。過去数回、野宿でお世話になっている(爆)巨大東屋でソフトクリームを食す。
  風が涼しい。東屋泊まりに決め込んで付近の温泉でくつろぐのも一興だ。もう320kmも走ってるし、ここが
  今日の最短目的地だし。時刻は14時。東屋にたたずみ、しばし考える。

   結論。この辺はたにぐうにとってはまだ、「日常」エリア。クルマなら家まで帰れてしまう距離。旅気分的には
  日常から抜け出したい。もう少し進もう。

   出発。すぐ新潟県。標高が下がってきたせいか、ムシ暑い。クルマも増える。
  十日町市街。ところどころ更地にされた場所が目立つ。中越地震の跡だろうか。国道252号へ入り、トンネル
  抜けると山肌に小さい地滑りやら、崖崩れ多数。この辺も歩いたなぁ。しかし、またもやねむい。国道17号を右
  折し、堀之内で本日2度目の給油。満載の荷物を見たおじさんに「どこから来たの」と尋ねられ、しばし歓
  談。その先のコンビニでパンとコーヒー食う。少し復活。小出から再び国道252号。田んぼの中の田舎国道。徒
  歩の時は1日かかってひいひい入広瀬村まで歩いた道だが、動力は20分もかからない。。旧守門村から
  国道290号へ。

   ここから先は夜中に一度走っただけの、未知の領域。非日常だー!山間の田舎道を登る。石峠を越えると
  山の上を走る道。中越の山地を見渡す。そして国道は、地滑りだらけ。迂回路&片側交互通行。単車を停めて
  見ると、またもや粉々ビスケット・・・。テレビで見た山古志村の歪んだ道もたいがいだと思ったが、これも結構
  えげつない。自然界のパワー、おそるべし。

        

   あとで道の駅で知ったが、復旧してまだ1週間くらいだったようだ。道は栃尾市へと下るが何かフラフラだ。
  必死に走り、道の駅とちお。フラフラとベンチに歩いていき、転がる。

               ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

   えらい。動けん。しばらく放心。動力なれども単車とはこんなに疲れるものなのか・・・。
  
   一息ついて売店へ。栃尾市は巨大な油揚げが名物らしい。
  豆腐と油揚げは大好物。気持ち悪いのを押して、巨大油揚げ(長さ30cmくらいか?)を食う。ウマい。冷蔵手
  段があったら、買っていく所なのに。また買いに来よう。

   油揚げパワーで復活。栃尾市内はたしかにとうふ屋が多い。里山と田んぼの田舎道を快適に進む。と、行く
  手をまたも地滑りが塞ぐ。見ると、道端の5mくらいの高さの丘が地滑っている。地滑りには、高さは関係ない
  ようだ。

   村松町に入ると、山がだんだん低くなり、越後平野が広がる。新しい世界が広がる気分だ。水田の道を進み、
  咲花橋で阿賀野川を渡る。大きくゆるやかに流れる河に夕陽が落ちる。カラスの群れが電線から夕陽を眺めて
  いる。

   暑き日を 烏見送る 阿賀野川・・・   (cf : おくのほそ道)

   さあ、あと少し。国道290号を五頭山麓へ。杉木立の中の村杉温泉。こぢんまりした温泉街にきれいな共同湯。
  営業時間を確認し、温泉の奥へ。2kmほどで奥村杉キャンプ場。18時45分。今日の最遠目的地。キャンプ場はきれい
  なトイレと小さい炊事棟だけの、簡素な無料キャンプ場。遊びに来ていた家族連れの子どもの相手をしながら設
  営。お菓子とジュースをいただく。にこ。しかし、アブがうるさい。油断していたら、テントの中がアブだらけに!!
  蚊取り線香焚いてアブり出す。設置完了19時半。自分がとにかく汗くさいのでまず風呂だ。

   温泉に戻る。ここは放射能泉で特徴のない湯だが、労働後の体に温泉はうれしい。疲れ洗い流す。閉店までね
  ばった後、ビールとつまみを買って帰宅。もうアブいない。見上げると、星がバラまかれている。天の川流れる。
  かんぱーい!!とりあえず、日常が届かない所まで逃げてきた。旅の空に還ってきた喜びをかみしめながら、
  おやすみなさい。



  2005年8月4日
  愛知県春日井市→新潟県阿賀野市  晴れ時々曇り  走行距離 約480km









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