東北大陸北上編  その3


   ざざーーん、さわさわさわさわーーーー。ざざーーん、さわさわさわさわーーーー。


     遠くに波の音が響く。
    明るさに外を見れば霧で真っ白。しかし、まだ4時半。
    テント内はムシ暑いので、とりあえず這い出してメシの準備。

     隣のキャンピングカーのおっちゃんと話す。
    「どっから来た?」「下北はええぞ。かっぱの湯は500円になったけどな。」情報収集。

     メシ炊いてると今度は自転車に乗った地元のじいさんが、
    「どっから来た?」「ここはいいよ。雨降ったら炊事棟にテント張ればいいから。」
    6年前、徒ほほな旅の時にも、この町で、何回も聞いたセリフだ(^^)

    朝食後、浜に創られているサンドクラフトを見物。これも実は2年ぶり。


    



   今年の最優秀賞。どうやったらこうなるのか、想像つかん。
   万博にちなんでか、今年はやたらモリコロが多かった。

   8時出発。ここ八竜町には、徒ほほな旅でお世話になった岩谷先生が住んでおられる。
   2年前に再訪を果たしているが、せっかくなのでアポなしで訪問。しかし、ねぶたに行かれて
   留守。残念。と同時に「ねぶたかぁ(ニヤ)」。

   さて、今日の目標は龍飛崎。最初は国道7号で青森市→R280→R339と、外ガ浜街道を考えてた。
   しかし、晴れてきた。しかも昨日からひたすら日本海沿いだ。気分は海沿い。
   能代市に入り、GSで給油。おっちゃん「どこまで行く?国道101号で海沿い行くのが気持ちいいぞ」。

   国道101号に左折。白神山地に向かって田園をゆく。車も少ない田舎道、チャリダーあり、追い抜いて
   減速しながらピースサイン。あちらさんも手を振って答えてくれるのミラーでかくにん。旅人の国に
   なってきた。そして左に日本海が青い。あっという間に秋田青森県境。単車を停める。
   緑透明な海に岩礁、濃いブルーの空。


    


   と、1台のバイクがやってきて停まり、乗ってた姉さんに声をかけられる。「すぐそこで立ちゴケしてまった
   んですよー。ブレーキレバーが折れちゃって。応急処置できるモノ何か持ってません?」。
   持ってますとも。ささとビニールテープを取り出し、割り箸を添え木にして折れたレバーをビニールテープで
   ぐるぐる巻き。そばにいた軽1BOXのご夫婦も加わり、応急処置完了。「前ブレーキは極力使わないで、
   能代まで行けばバイク屋があるだろうから、そこで直してもらえばいいよ」。姉さんにジュースをおごってもらい
   みんなでしばし談笑。姉さんはこれから仙台まで帰るそうな。

   結局1時間ほどの休憩。さあ、走ろう!!海を左に風となる。
   岩崎村で振り返ると、白神山地には今日も雲が湧く。山がかすむ。


    そして、この道に来たらまず海沿い温泉。黄金崎不老不死温泉が有名だが、何回も入っとるので本日の標的は別。
   椿山の園地に入り、行き止まりに単車を停め、急斜面の階段を浜へ降りる。石ごろごろの浜を左に進むと、ありました。温泉。
   コンクリート製の集湯槽から熱湯がドバドバ溢れだし、もうもう湯煙。お湯は石をオレンジ色に染めながら海へと流れ
   去っている。ここが、椿山温泉源泉。
    温度計を持って泉源に近づくが、熱い。実測50℃。波打ち際に石囲い。表面は48℃だが底は海水でアチチ冷たい。かき混ぜ
   ながら入浴!目線に海、というより日本海に浸かっている。はははははー。笑う。
   

   


    オレンジ色濁りの湯は塩辛く、鉄味強く、甘い鉄臭。ギンギラの青空に蒼い海。すぐそこにフグや小魚泳ぐ。
   波ちゃぷちゃぷ。はははははー。
   しかし、熱い。太陽熱+石の反射熱+保温効果抜群の強食塩泉+海水でくらくらだ。これは危険だ。
   名残惜しいが上がる。汗がとまらん。夏は危ないなぁ。でも、真冬はそれこそ日本海の荒波だから、もっと危ないか。
   春秋がよいのかも、などと考えながら上半身裸のまま駐車場に戻る。と、さっきの軽1BOXの夫婦が「温泉は
   あったかい?」とやってきた。ご夫婦に桃を頂き、車の陰を借りて食す。少し体力復活。


    さて、深浦に来たら訪ねるべきところがある。向かうは「弥生寿司」。初回訪問は大学生だった1998年1月。
   友人トモさんと2人、車で真冬の青森へ。日が落ちて、国道101号は闇と雪の中。夕飯食べるところないなぁ、、、
   と思っていた所に1軒だけ開いていた寿司屋さん。のれんをくぐると気さくな大将が「この寒いのによう来たな」と、
   地物の魚ざんまいのお寿司を山盛りごちそうしてくれたのである。そして徒ほほな旅で再訪を果たし、一昨年2003年
   のバイク旅でも立ち寄り済み。
    のれんをくぐると若大将、「あ、また来てくれましたね。」2年ぶりなので、顔を覚えてくれていた。しかも昨年は能代の
   店にいて留守だった大将もいらっしゃった。「前に歩いてきた人か!そりゃよう来てくれた。たくさん食べてってくれ」と、
   出されたのは、相変わらず(^^)寿司板からはみ出さんばかりの満員電車な握り寿司。若大将が「まさかウニまで乗るとは
   思わんかった(笑」、というほどの地魚盛りを、ゆっくり味わう。しふくのひととき。

    若大将「これからどこ行くんですか」。たにぐう「ちょうど(青森で)ねぶたやってるんで、跳ねてこようかと・・・」。すると大将が
   「この先の五所川原に『立ちねぶた』いうのがあるんやけど、今日とちがったか?」
   カウンターのおじさん、「ちょうど今日や。あれはえらいもんや。いっぺん見とくとええぞ。」
   若大将、「あれは、すごいですよ。とにかく大きい。あまりの大きさに口が開いたままになってしまう」。
    青森のねぶたの山車は、幅広で横に大きいのだが、「立ちねぶた」は、名の通り縦に長い、というか高いそうだ。
   五所川原の町には高い建物がないので、遠くからでもこの山車が見えるらしい。一時期なくなっていたのを復活させたの
   だが、観光用というよりは地元の人たちのためのお祭り、という感じらしい。
    皆様にそこまで言われたら行くしかない。礼を述べて「弥生寿司」を後にする。


    日本海を左手に、気持ちよい海沿い道。やがて正面に岩木山が現れる。道の駅もりた。まだ15時。祭りにはだいぶ時間がある。
   時間つぶしがてら、近くの森田温泉へ。実は徒ほほな旅の時に入ろうと思ったのだが、気づかずに通り過ぎ別の温泉に入って
   きた。よって今回が再挑戦。旧街道沿いに見覚えのある看板。通りから奥まった所に、看板がなければ民家にしかみえない年季
   の入った「家」が1軒。これが森田温泉。





    中に入ると、土間と座敷。民家である。テレビを見ていたじいさんに250円払って風呂場へ。素っ気ないコンクリートの床と湯船は
   温泉の成分で赤茶色。そこに少し濁りのある透明な湯がどばどば流れている。カランも温泉なのだが、1つは壊れていて、お湯が
   シュッシュッと吹き出している。湯船のパイプからはお湯といっしょに大量の泡が噴出し、湯面は泡だらけ、天然泡風呂である。
   飲めばシュワシュワサイダー甘味にマグネシウム味に弱い塩味ミックスでウマい・・・。
    などと観察的に書いてはみた。が、実際は、

     「わーーーー、すげーーーー!!」じゃばーーん(かけ湯)、ざぶーーーーんんん。
   (お湯どばどばーーー)、「うおーーーー、あわあわーーー」、ごくごくごく、「んめーーーーー」
    ・・・・・・・・・・・「ふいーーーーーーー」

    ・・・1人なのをいいことに、ついはしゃいでしまったが、あとは炭酸全開のお湯を心静かに満喫。

    さあ、祭りだ。国道で五所川原の町に近づく。田んぼの向こうに市街地。と、建物の間から巨大なカラフル行燈???が
   見える。山車であることは分かるのだが、明らかにサイズがおかしい。これ、3階建てでは済まないよなぁ・・・。
    ひとまず五所川原の駅に行き、単車を置いて、くだんの行燈に近づく。出陣準備中のねぶたは、とにかく高い!!5階建て
   くらいか。ねぶたの車庫兼博物館があり見学。車庫といっても5階立てビルである。もともとは江戸時代末期に始まり、明治
   から大正にかけて巨大ねぶたが作られた。しかし、火災などで焼失。1998年に80年ぶりに復活したらしい。

    ひとまず寝床設営のため、20kmほど走り、金木町の芦野公園へ。きれいな草地のオートキャンプ場だが、もちろん無料。
   テントを張り再び五所川原。市内の河原に単車を停め、てくてく町中へ。ねぶたが右折する交差点に陣取る。高さ20mが通行
   するので、電線はすべて取っ払い済み。通りはすでに人人人。薄暗くなる頃、向こうからねぶたがやってきた。ハネト(踊りの
   衆)を従え、最初は5mくらいのノーマルねぶた。その後ろ、真打ちの立ちねぶた。20mの巨体が交差点を曲がっていくのは
   圧巻だ。ねぶたは、保存会やら町内会やら単位で運行しているようだ。高校も2つ出ていた。これはうらやましい。本物の
   「文化な祭り」だ。ハネトの方は様々で、統率の取れた踊りを披露する所もあれば、そうでない所も。見せる祭りというより、
   地元民の祭りだ。そうなると、やはり参加するのが一番楽しいのではあるが。





    ねぶたの一群がすべて曲がって行ったので、一番後ろの立ちねぶたの後に付いていく。見上げる高さだ。
   と、「兄さん、どっから来た。」隣に若いにーちゃんが二人。一瞬からまれたかと思ったが、愛知県から、と答えると、
   「そら、遠くからよう来てくれたなあ。しかし、でかいやろ。よそから来た人は、口開けて見上げてるからすぐに
   分かるんや。」
     言われて、自分が口を開けっ放しでねぶたを見上げていたことに気がつく。
     昼に寿司やの若大将の言っていたことを思い出すと笑えてきた。


  2005年8月6日
  秋田県八竜町→青森県金木町  晴れ     走行距離 約200km


                             一番上へ