北海道・前編  小学校に星が降る その2





     北海道の朝は早い。
     外の明るさに目を覚ますが、まだ午前4時台・・・。
     無理矢理二度寝を決め込むが、外はますます明るい。

     テントから這い出すと・・・   快晴だ!!

     朝日を受けた山の緑がまぶしい。


          

      顔を洗って戻ってくると、テントのそばに登山道の入り口と案内看板。
     ニセコ連山主峰のニセコアンヌプリまで片道1時間くらいらしい。

      今回、バイクで旅するにあたって考えていたことがある。これまでの北海道では、自転車、軽トラキャンピングカー(謎)、
     そして徒ほほ、と、人力、もとい、低速移動手段が主体であった。そこに、オートバイ。オフロード車なので、スピードは
     そんなに出ないが、しょせんはエンジン付き。これで北海道をどう感じるのか。オートバイらしく、風になる、何もない道を
     ひたすら走る。これはありだろう。しかし、何もない所は徒ほほの時に思い知っている。人力の感動は、動力で楽をしては
     手に入らない。やはり、肉体を駆使して、肉体で掴み取るのが感動だ。ならば、オートバイの機動力で山に分け入り、
     山に登ろう!と考えた。(ちなみもう1つ裏テーマがあって、それが、「沈没しよう」なのだが。「沈没」には移動手段は関係
     ないからね。)
      ということで、当初予定にはなかったのだが、メシを食い、軽装で登山道を駆け上がる。肉体が運動を要求している。
     1時間で頂上へ。午前7時。山の向こう側から昇ってきた太陽がまぶしい。


          


       青白い世界に、羊蹄山がぬうと立ち上がる。大海から顔を出した海坊主。
      雲が地平線に広がり、大地も宇宙も渾然の白い海。

       振り返る。登ってきた方は順光の青の世界。空も海も大地も青い。


          
                         (よく見ると、右手後方に日本海と積丹半島、岩内の町↑)


      青い空間をたんのう。しかし、日差しは強烈。あぶり出されるように、来た道を駆け下る。



      さて、本日のイベントは、泥湯の沼である。これを目当てに、ニセコにやってきた。撤収してバイクにまたがり、
     少し下った湯本温泉へ。ここの温泉の源泉は、大湯沼なる温泉の沼である。バイクを停め、登山用のバックパック
     に道具を詰めて、大湯沼の畔へ。沼の湯は表面では50度くらいだが、湖底では100度近くになるらしい。昔は湯が
     吹き上がっていたそうだが、鉱山会社が沼で硫黄を採掘してから吹き上がらなくなったそうだ。しかし、ここは廻りを
     柵と遊歩道でぐるり囲われた観光地。お湯に触るのは後回しで、遊歩道を進む。と、道ばたに分かれ道を示す道標が
     建っているが、一方の行き先表示はもぎ取られている。しかももぎ取られた跡が指す方向は斜面の笹藪・・・。

      ばさばさばさばさ。    突入(笑)    


         

     
      持ってきた国土地理院25,000分の1地形図では、ここから沼まで歩道の線が入っているが、見事に廃止されている。
     目線は笹藪だが、しかし腰をかがめると、雨水にえぐれた道が藪の奥へ続く。腰の曲がったじいさんの姿勢で、前進。
     笹の海をゆるやかに登っていくと、ふと前方に藪のない空間が現れた。そして硫化水素系の酸っぱい臭い・・・。そして
     目の前に、すり鉢状の灰色の沼が現れた。これが、小湯沼。すり鉢に滑り落ちないように、地形を確かめ、沼から川が
     流れ出る平地に降り立つ。灰色の沼は、あちこちで泡をぶくぶく沸き立てている。触れば適温のお湯が、川となって笹藪
     の中へ流れ去っている。まさに噴火口の沼だ。
      早速野人と化し、まずは川の方へ。適当な湯だまりにぼちゃーーん。うおー、どろどろだ。薄灰色の、とてもクリーミーな
     泥湯。きめ細かい泥だが体にはしっかりまとわりつく。顔にも泥を塗りたくり、全身天然泥パック。沼に向かって立ち上がれ
     ば、泥の妖怪だ。うほほーい。
      さて、沼にも浸かりたいなあ。でもすり鉢だから、はまるとコワいなあ・・・。川となって流れ出るあたりから、おそるおそる
     足を伸ばす・・・。お、足がかりとなる岩が足に触る。腰かけになる大きさだ。これに座ると、ちょうど肩までリラックスで
     浸かれる!!


         

      これは痛快、天然巨大露天風呂だ(というか、噴火口だけど)。硫化水素が少々コワいが、風があるから大丈夫だろう。
     泥パックと巨大露天をかわるがわるたんのう。と、分析的な手法で書いてはみた。だけど実際は、、、





     もうええっちゅうねん(笑)






     さて、藪をかき分け再び大湯沼。激熱すぎて触れないので、これを引き湯している国民宿舎雪秩父へ。
    露天風呂が何種類もあり、1つずつ制覇。沼から引いた灰白濁の硫黄臭いお湯。と、内湯に妙な湯船が。汚く濁り、
    油膜に泡が浮き、強烈な鉄の臭い。何じゃこりゃ。しかし、当然ながら、突入(笑)





    うおーーーー、鉄鉄鉄鉄鉄てつーーー。臭いも味も
   金属きんぞくーーーー!!!!

                                                  (結局やってるし・・・・)


     「鉄鉱泉」と表示されていたが、強烈鉄温泉だ。分析表によると、FeU7.0mgらしい。これも、楽しいたんのう。


      腹へった。バイクにまたがり、ぐねぐねワインディングを岩内の町へ駆け下る。カーブにバイクを傾け体を預ける。道と
     単車と肉体の一体感。これは、オートバイのものだ。
    
  
      道の駅に停車。裏手の直売所で、留守をあずかるカミさんにタラコを送る。そして1994年の記憶を頼りに、通りから一本
     入った所のすし屋へ。またしても地魚山盛りな上寿司でまんぞくまんぷく。社会人ライダー、ぜいたくしすぎだな。



      腹も満たされたし、朝からよく遊んだ。14時半。明日の道東へ向けて移動しよう。中継点になる追分町の鹿公園が目標だ。
     右手にニセコ、そして羊蹄山を見ながら国道を進む。直線路は気持ちいいのだが、ゆっくり軽トラが続々現れだんだん眠い。
     喜茂別の町を抜けると直線路。車通りもない。バックミラーを見ると、小刻みにうねる直線路。路肩を示す矢印の標識の列が
     次々と遠ざかっていく(ヨソ見キケン)。これはいい。ちょうどバス停が現れたので、バイクを停め、ヘルメットも脱いで、来た道
     を仰ぐ。

      


      車のいない、まっすぐな道。その向こうから、羊蹄山がこっちを見下ろす。どてらを羽織った親分の貫禄。
     何もない道ばただけど、いい眺めだ。


      ふと、反対車線に目を移すと、立派なバス停小屋。扉には歌が詠まれている。

      


      達筆すぎて読みにくいが、ここに暮らす人の生命力を感じる。近づく。この小屋、頑丈だなあ。吹雪でも大丈夫そうだ。野宿
     適だなあ、などと徒ほほ以来の習性(野宿適地発見レーダー、と呼ぼう)を発揮して、小屋周りをうろうろ。バス停の名前が、
     「双葉小学校」となっている。それに気づいて振り返る。






      



      平屋建ての、小ぎれいな小学校だ。しかし、人の気配はない。夏休みだしなあ、などと思いながら、道路を渡り、なんとなく
     校庭に入る。

      手入れされたきれいな校庭に、大きな木々に、遊具たち。しかし、正面玄関には、「双葉小学校」。どうやら閉校して
     しまっているらしい。それにしても、手入れが行き届いている。地元の人たちが大切にしとるんやろなあ。校庭の木々の
     緑がみずみずしい。




      「こんにちは、どちらからですか?」

      いきなり声をかけられて振り返ると、小さい子を抱っこした、同年代くらいのきれいな女性が立っていた。不意打ちでどきどきする。

     「こんにちは、単車で、愛知県からです。(何か話そう)ここは、閉校してるんですか?(旧って看板に書いてあったじゃん)」
     「2年前に閉校したのを、私たちが借りて、史料館を作っているんです。キャンプもできるんですよ」
     話を伺うと、ご夫婦で移住してきて、史料館を作りながら、ゆくゆくは人の集まる場所にしたいのだそうだ。

      閉校した小学校でキャンプとは、なかなかに気になる。まだ人には知られていなさそうだし。しかし、不意打ちな展開に
     心が定まらない。少しお話したのち、「今日はもう少し走ろうと思います」と、礼を述べ、再び単車にまたがり、走り出す。


      10分ほど走り、大滝村の道の駅。

      停車。


      偶然の出会いに盛り上がった訳でなし、強烈に惹かれる何かがある訳でなし・・・。


      しかし、何か、呼ばれている気がする・・・。


      10分後。


      今度は校庭に単車ごと乗り入れる。

      玄関を入り、声をかけると、さきほどの女性(愛称:かかさん)が出てきて、
     「あら、戻っていらしたのですか?」
     「ただいま(笑)、何か呼ばれている気がして戻ってきました。一晩キャンプでお願いします」
     「どうぞどうぞ。オーナーも喜びます。キャンプは校舎の裏側なので、一度道路に出て、校庭の東側の道から入ってください。
      オーナーは夜には帰ってくるので、それまでゆっくりしていてくださいね」

      かかさんに言われたとおり、校舎の裏庭へ。


      




      これは、秘密の空間だ。ふかふかな草地。校舎と白樺の林に囲まれた秘密基地。さっそくテントを張って寝っ転がる。
     草地が心地よい。白樺林にはハンモックが吊られている。これはいい。乗ろうと試みるがすぐにひっくり返って地面にどすん。
     乗るの難しいな。その脇をきれいな小川が流れ、林の向こうは裏山で、スキーゲレンデが切り拓いてある。
     まだ17時。急速に時間の流れがゆるやかになる。ハンモックの脇に置かれた、工事用電線リールの机に、店をひろげ、
     暮れゆく空を眺めて米を炊く。椅子はミルク缶に丸太をくっつけた手作りだ。
      ランタンに灯を付け、ピーマンを切る。と、かかさんがやってきて、ばんごはんのおすそわけ。わーい、おかずを並べ、
     「食事」と洒落込む。ゆったり、ぼんやり。小川のせせらぐ音がBGM。




      やがて日もとっぷり暮れた頃、「こんばんは、よく来てくれたね」 オーナーの今関さん(愛称:ととさん)がやってきた。
     たき火をさっと起こし、缶ビール。「まずは、出会いに乾杯だ!」
      「しかし、よく気がついたね」
      「直線路と羊蹄山がきれいで単車を停めたら、そこに小学校があったんです。」
      「道の駅まで行って、戻ってきたんだって?」
      「ええ、何か呼ばれている気がしたので」

      ととさんは経歴豊かな人だ。東京出身で、仕事で「びっくりドンキー」のお店のディスプレイをしたり、20年前に札幌に
     やってきて、駄菓子屋やら、美術商やら、懐かしい物屋やらをやり、そして2年前にここへやってきたという。

      「ここは何もない所だよ。でも、何もないよさを分かる人だけに来てほしいんだ」

      何もない所のよさ。何もない道を歩きまくった自分が、大事にしていることだ。

      ととさんは、これまでやってきたことを活かした史料館にするのだという。駄菓子屋や、懐かしい物を集めた展示や、
     もちろん小学校なので、ここに関わった人たちの想い出は残したい。でも、それだけではない。
     じいちゃんばあちゃんも、とうちゃんかあちゃんも、子どもたちも、みんなが楽しめる遊び場にしたい。
     行政も巻き込んで、学校を食堂にし、さらにはバーにして・・・。

      「小学校で酒が飲めるっておもしろいやろ。役場に言うたら、えーー、て言うとったけどな(笑)」

      もちろん、旅人だけでなく、ここに住んでいる人たちも繋がる、地域のつながりも受け入れて、人が集まる場所にしたい。
     そんな話を聞きながら、まだ原石のこの場所が、次に訪れた時にどうなっているのか、ととさんの夢を想像する。
      
      「明日はどうするの?」
      「一応道東の方へ向かうつもりですが、せっかくなのでのんびりしていきます。行き当たりは大事にしてるんで」
      「なら、ゆっくりしていってよ。史料館も見ていって。あと、仲間が蟠渓で温泉やってるから、風呂ならそこがいいよ。
       そこの近所の松葉ラーメンも仲間だから、よかったら寄ってみて。」
      こうして、出会った人の流れで予定を作るのは、想定外で楽しい。

      楽しく話すたき火の時間はあっという間。ととさんは明日も朝から仕事で出かけると言う。

      「トイレは校舎の中を使ってくれたらいいよ。裏口開けておくし、電気もつけとくから。では、よい旅を。おやすみ」

      ととさんが帰ったあと、たき火の残りを頂いた缶ビールで楽しむ。たき火はいつまで見ていても飽きない。


       


      燃やしきったところで火を消し、トイレへ。ととさんの気遣いに感謝して電気を消す。


      たき火の消えた裏庭の上空には、星がぶちまけられている。天の川は星の洪水。
      流れ星が飛ぶ。ペルセウス座流星群だ。テントにもぐり、顔だけ外へ出す。降り続く星々の光を浴びながら、おやすみなさい。

      
      






      翌朝。
     
     外は早くから明るいが構わず二度寝。

     しかし、強い日差しで室温上昇。テントからあぶり出される。午前7時。今日も快晴だ。


      


     まずは昨日のテーブルにて、ごはんとみそ汁の朝ご飯。風は冷たく快適だ。腹が満たされ、ぐうたらする気満々。
    ハンモックに再挑戦。寝転がった後、両足をハンモックの外に投げ出すと安定するみたいだ。微妙なゆらゆらが
    眠気を・・・さそ・・・・・。

     しかし、ゆられているだけだと風が寒い。テントから寝袋を引っ張り出す。再びハンモックに乗り、寝袋にくるまる。

       

     セルフタイマーしてみたのだが、10秒でハンモックに乗れず、無駄な写真を生産しまくった挙げ句の1枚。

     しかし、気分は蓑虫である。今誰かに襲われたら、文字通りの手も足も出ないだなぁ、などとくだらないことを
    考えながら、暖かくてこれはかい・・・て・・・・・。


     1時間くらいで目が覚める。今日のやる気はすでに溶けた。
    とりあえず、校舎内を見学するとしよう。
     
     教室ごとにテーマを分けた展示になっている。鉄道(廃止された胆振線関連のものども)、消防、農機具、駄菓子屋
    などなどなど。ディスプレイ上手なのは、さすがだなぁ。そのまま講堂へ。これから展示されるであろう物どもが脇に積み
    上がっているが、きれいに掃除されている。


      

      校歌。やはり羊蹄山が一番に入るんやな。

      床に寝っ転がり、大文字。不思議に静かだ。ここも2年前までは子どもたちの賑やかな声で満たされていたのだろう。



      ふたたび教室へ。小学校の教室そのままの部屋へ。習字や絵も貼ってある。小学生サイズの机と椅子。これは心静まる
     空間だ。テントから日記帳を持ってきて、心に浮かぶことどもを、つらつらと書き記す。


      



     ひとしきり書いて、ふと時計を見ると10時半を回っている。
    朝からほったらかしといて頂いているので、時間を気にせずぼんやりしていられるのがありがたい。
    しかし、そろそろ風呂でも行こうかなぁ。

     のそのそテントを片付け、着替えて荷造り。玄関に回り、かかさんにごあいさつ。
    「今日はどちらへ?」
    「ひとまずひかり温泉に浸かって、松葉ラーメンでお昼食べて、あとは東に流れていきます」
    「気をつけて、またいらしてくださいね。いってらっしゃい」

     かかさんに見送られ、小学校を後にする。


     次に北の大地に上陸した時には、まず一番にここを目指そう。
     次、はおそらく10年以上後になりそうだが、その頃には、ととさんのたくさんの夢が形になっているだろう。
    そして、かかさんが最後に言ってくれた、この旅で2回目に聞く、「いってらっしゃい」に、ここが旅人の
    集う場所になるだろうな、という確信を覚える。新しい楽しみができた。



     旅行ハイシーズンのはずなのに、ガラガラの国道をゆるやかに20分ほど走り、ひかり温泉へ。

      


      年季の入った旅館の玄関をくぐる。出てきたおかみさんに、「双葉から来た」と告げると、
     「あそこに泊まったの?よく見つけたね。ゆっくりつかっていってね」と、歓迎してくれる。
     狭い廊下を探検気分で進み、浴室へ。

      


      年季は入っているが、明るいタイル張りの湯船に、透明澄明なお湯がなみなみあふれる。うすい塩味、
     というか、ダシ汁の味。昭和な感じが全開だ。またも時間がゆるやかに。お湯につかり、熱くなれば、桶を
     枕に床に寝っ転がりトドと化す。聞こえるのは湯船に注がれる湯音のみ。理想の内湯で、やる気また溶け出す。


      腹が減ってきた。1時間以上経っている。おかみさんに礼を述べて辞去し、少し戻った松葉ラーメンへ。
     マスターに「どこから来たの?」「昨日は双葉に泊まりました」「そうか!おもしろいオーナーだったやろ」と、
     ここでも話がはずむ。出てきたラーメン定食は大盛りだ。ととさんの仲間はみんな楽しく元気な人たちだ。
     「また来てな」マスターに見送られ出発。

      と、走り出してすぐに、ここが蟠渓温泉であることに気がついてUターン。温泉街中ほどの駐車場にバイクを停める。
     タオルと温度計片手に駐車場から土手を下り、長流川の河原に降りる。川底が岩盤の河原を少し下ると、あります、
     岩盤をくり抜いた野天湯船。泡とともにお湯が湧いている。手を突っ込む。激熱。温度計を突っ込むと62度・・・。
     これは入れないじゃん・・・。この湯船から流れ出たお湯が、川に合流する所に湯船が掘ってある。しかし、表面激熱、
     中は冷たいで快適とはいえない。最終はここだが、何かないかなあ。下流へ。大岩一つ越えると、さっきのより一回り
     小さい岩盤くり抜き湯船。手を突っ込む。見た目は汚い緑色濁りの湯だが適温だ!!素っ裸になり、どぼーーん。
     
      

      目線の先に川の流れ。対岸の緑。快晴の空。目を閉じれば川のせせらぎだけが聞こえる。

      日差しもあって熱くなってきた。対処は簡単、隣の川へ素っ裸のまま、どぼーーん。冷てーーー!!
     冷えたら温泉、川、温泉・・・・。繰り返す。ここが、「オサル湯」。お猿ではなく、長流(おさる)川だからなのだが、
     浸かっているのは野人ではなく野猿(のざる)そのものである。
     他に誰も来ないのをいいことに、長逗留。上がって単車に戻るともう15時を回っている。あー楽しかった。野湯は楽しい。


      さあ、いいかげん、走るとしよう。


      峠を越えると、背景に樽前山や風不死岳を従えて、支笏湖が広がる。


      双葉の「何もないよさ」と「ゆるやかな時間」の余韻に浸りながら、湖畔の国道を流れてゆく。

      明日からは、また新たな世界だ。



  2005年8月10日  北海道蘭越町→喜茂別町  晴れ     走行距離 約120km
        8月11日  北海道喜茂別町→由仁町  晴れ      走行距離 約160km


       −−−−−−突然ここで編集後記(中記?)−−−−−−

      たにぐうです。ライダー編の日記はまだまだ執筆中なのですが、こんなところで編集後記(中記?)を書きます。

     今年、数年ぶりに旅日記を書き始めたのですが、実は今年中に、ここ↑まではどうしても書いておきたい事情がありました。

      途中で止まっていた、「徒ほほなライダー2005夏」を再開しようと画策し始めた9月終わりのこと。
     ふと、「そういえば、双葉小学校どうなってるかなあ」、と思い、何となくヤフーで検索してみたのです。
     実は、たにぐう、旅で訪問した所については、帰った後はネット検索しないのが、自分の鉄の掟です。理由は簡単で、
     「次にそこを訪ねたときの感動が激減する」からです。旅は自分の肉体でつかみ取ってくるもの。ネットは便利だけど、見て
     しまうとつかめるものが減ってしまう。
      でも、このときはなぜかヤフーしてました。初めてです。すると・・・ありました、双葉小学校ブログ。「雪月花廊」の名を冠して。
     そして!!12年の間に、双葉小学校は、あの日、ととさんが語ってくれた以上のものに激しく進化していたのです。
     「何かすごいことになってるなぁ!!でも、しまったなぁ、これ、ブログ見ずに再訪したら感動雨嵐だったなぁ・・・」
     少しブログを見て、そんなことを思ったたにぐうは、次の記事に、言葉を失いました。
     たにぐうがブログを見つけた10日ほど前に、ととさんが病により他界されていたのです・・・・。

      「何か呼ばれた気がする」

      双葉小学校を訪れた時に思ったことが、頭をよぎりました。たぶん、呼ばれたのです。
     そして、双葉小学校を訪れた日のことを、書き記さねば、との思いで、この3ヶ月を過ごしてきました。
     ブログでは、その後も奮闘されている、かかさんのご様子や、集う皆様の様子が今もつづられています。
     この日記は、そんな、かかさんと、天国のととさんと、ここに集う皆様に読んでもらおうと思って書きました。
     そして、次の北海道は、双葉小学校に帰るためだけに行こうと、たにぐうは思うのでした。(つづく)


      (追記) 上の原稿を書いた後、かかさんにお手紙を出したところ、お返事を頂きました。ということで、
           リンクを貼らせていただきました。ありがとうございます&応援しています。

                  「雪月花廊 喜茂別旧双葉小学校史料館
      
.           ぜひご覧くださいませ。(2018/1/22)


      (追記その2) 2019年5月、帰ってきました、念願の双葉小学校。以下に公開。

         「堂々たる旅」  第4話  旅人は小学校に帰る
                    2020/05/03 今日でちょうど1年(汗) ようやく公開。
 

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