たにぐうです。潮岬にて停泊。年賀状を書き、
仕事(=web原稿)を片付け、旅人たちに写真を送るべく
手紙を書く。そして、これが嵐の前の静けさ・・・。

和歌山県1で書いた、石川さゆりと国道の話。R339は「
津軽海峡冬景色」、R414は「天城越え」のことです。

1/4 (火)

 潮岬 晴 2km

午前中は木のテーブルの所で年賀状書き。徒ほほの途
中で世話になった人への礼状も兼ねているので、がん
ばって書かなきゃ。昼、岬の集落の店で雑誌とおやつ
を買い込み、芝生でごろごろしながら雑誌読む。
今宵も星がよさげだが、眠いので寝る。

1/5 (水)

  潮岬 晴 10km

年賀状ようやく書き終わる。やれやれ。串本の町へ出
て(片道4km)、温泉と買い物。豚肉とニンニクの芽を買う。
ばんめしは珍しくにくだ。

1/6 (木)

 潮岬 雨|曇り 2km

雨降りで荒れ模様。よって寝るか食うかの生活。
夕方、実家から送られてきた局留め郵便をゲット。中身は
モチその他。モチはうれしい。

1/7 (金)

 潮岬 晴 停滞

朝からモチ焼いてニンマリ。正月だ。天候安定なので
テーブルで日記書き。そしてたまっているweb原稿に着手。
1日かかって1本作成。

1/8 (土)

 潮岬 晴 停滞

原稿執筆モード。関東あたりの日記だが、未だに克明に
覚えてるよなあ。心は関東に行ってしまう。原稿2.5本。

1/9 (日)

 潮岬 曇り/雨 5km

ねこぐるまを買うべく町へ。しかーし、雨が降って
きたので買い物だけして逃げ帰る。雨は本降りに。
買ってきた小アジの姿寿司はさっぱりしててかなりうまい。
スーパーの寿司では久々大当たりだ。テントにこもって原稿書く。

1/10 (月)

 潮岬 晴 停滞

テントの中で段ボール箱を机がわりにひたすら原稿書き。
はかどる。とうとうテントは自分1人になる。
毎日入れ代わりで1組はいたのに。そろそろ通報されるかもなあ。

1/11 (火)

 串本町潮岬←→古座町 晴 18km

町へ。コインランドリーでまともな洗濯。
アジ姿寿司ゲットしにこにこ。温泉は弘法湯へ。
ここ、週3回しかやってない。建物は普通の民家。風呂は
家庭用の大きさの浴室が2つ。湯船が木製でよい。湯はほのかに
硫黄臭。聞こえるのは波の音。う〜ん、まったり。

そして古座のホームセンターへ。ねこぐるま購入。ス
ペアタイヤ込みで9933円也。えへへのへ。
潮岬まで初ドライブだー。しかし空荷の割りには腕が疲れるなあ。
フル積載したらどうなるんでしょ?

1/12 (水)

 潮岬 曇り|雨 停滞

雨降りなので出発を延期。web原稿は三重県2まで完成。
やれやれ。すげえまとめ打ちだ。
がりやが文句垂れたのは言うまでもない。
続いて途中で会った旅人たちに手紙を書く。写真もいっしょに送るのだ。
22時まで作業。明日からとうとうねこぐるま作戦発動だー!!

 1/13 (木)

 串本町潮岬→古座川町一枚岩 曇り|雨 18km    with ねこぐるま 

2週間住みついた潮岬から撤収だ。段ボール箱に荷物をまとめ、
ねこぐるまに搭載。意外にコンパクトに載った。
荷物をひもで固定し、上からボトムシートをかぶせてできあがり。
パッキングに問題なし。よーし。 まずは最南端で記念撮影だ。

ねこバス、始動! やはり空荷で転がしてきた時と違って重い。
最南端の碑の前に駐車し、のうのうと記念撮影。
荷物にホクレン旗を差すと、ちっとは旅人らしく見える。よしよし 。

10時半、ねこバスしゅっぱ〜つ!! しかし、ものの5分で腕がだるい。
う〜、先は長いのう。1時間で4km進んで串本の町へ。
スーパーでサンマ寿司を買って食す。これから山奥に突入するので、
最後のメールチェックをし、13時出発。雨が落ちてきた 。
傘はさせないのでカッパを着て進む。蒸れて汗だく。

14時、国道42号と371号の交点に着く。 371号は紀伊半島を縦断する「酷道」だ。
途中2箇所で途 切れているし(迂回する林道はある)、
民家もろくにない山の中をえんえんと続く。そこにねこぐるま押して 
突入するのだー。この時、これがどんなにムボーなのか知る由もない。

 ほどなく峠道に。ねこバス、登りはきつい。押しがこんなにきついとは・・・。
カッパを脱ぎタンクトップになって汗だくで登る。
下り、今度はねこに引っ張ら れる。うへー。爆走して峠を下る。
なかなかハードやのう。軽トラのおじさんに話しかけられるが、
ねこバスに空いた口がふさがらんようだ。雨はやんだ。空気 はしっとり。
紀州の山の空気だ。道は狭く川沿いをうねるように走る。これぞ紀州。
海岸を歩いてるだけでは、ほんとの紀州は分からんのだ。

古座川の一枚岩の園地にある東屋に設営。メシを食うと疲れがどっとでた。
寝よう。おやすみ。 そして、事件はその夜から幕をあける・・・・。

 夜中、突如猛烈な吐き気に襲われる。おえ〜。激しく下痢。
なんやなんや!?悪いもん食ったかあ?下痢は 止まらない。
30分おきに、げえ〜。腸の辺りから出てくるようだ。これはちょっとやばいぞ。
でも、ここでは何もできない。5時間ほど吐き続け、
その疲労でいつ の間にか寝ていた。


 1/14 (金) 
古座川町一枚岩→同町平井 晴 23km with ねこぐるま 
   
あ〜、ひでえ下痢だった。少しは落ち着いたようだ。
 固形物は食えないので、りんごを食う。動けそうだが 、
どうするか。電話帳を調べると、5km先に診療所があるようだ。
また潮岬に戻るのもアホらしいし、前進しよう(こっちがほんまのアホ)。

 8時半出。途中一服していて、ねこバスがパンクしているのに気が付く。
おいおい、もうかよ。そんなパンクするもんじゃないと思っていたんだが。
しゃーないのでスペアタイヤに取り替える。次パンクしたらアウトだ。
すでにパンク修理できるような店はないし。なのに前進するアホ・・・。

    三尾川診療所へ。原因はどうやら水らしい。昨日一枚岩で水道水を飲んだが、
味がかなり変だった。ここら 辺は蛇口から出る水でも沢から取っているから、
よそから来ていきなり飲めばそりゃーあたるわな、と言われる。
それに昨日は降雨直後だったしな。くそー、今まで
生水にあたったことなんかなかったのにー。

」薬をもらいまずは一安心。 近くのガソリンスタンドでねこバスの
タイヤに空気を入れる。店のおばちゃんは、
「ねこなんて、坂きつくて 大変やね〜」と感心している。

さて出発。少し進むと 昨日よりきつい坂だ。う、確かに登りは厳しいぞ。
休み休み登る。腕だけで、ねこを持ち上げ、バランスをとり、押しているので、
腕と肩がどんどんだるくなる 。うお〜、こんなきついとは思わんだ〜。
でももう手遅れ。前に行くしかないのだ〜。まあじき慣れるやろ。

ダムを過ぎると国道はいよいよ細くなる。最終集落の 平井を16時に通過。
もうふらふらだ。猟師のおやじに 感心される。人目でもそんなに大変なのか!?

17時、国道と迂回林道の分岐に到着。林道といっても舗装されていて
国道より立派だ。その道端に設営。あーしんど。まじめにしんどい。
これまでで最強だ。 メシだ。生水は使いたくないので、
水をあまり使わないパスタをゆでる。これが失敗。病み中の腹にはきつかった。
半分は明朝食おう。腹重いし寝よう。

通行車 皆無。聞こえるのは川の音。ときおり上空を飛行機が飛んでいく音。
風はなく、それ以外に音はない。山奥に1人。孤独とか寂しいとかは
思わなかったが、なんか乾いた空気を感じながら眠る。


 1/15 (土) 
古座川町平井→上富田町 晴 18km+車60km withねこぐるま

 昨日の朝より調子はよくない。残ったパスタを食うが食い切れず残す。
めし残すなんて初めてだ。 荷物を置いたまま、行き止まりの国道の末端まで散歩。
けっこう距離がある。末端は舗装がいきなり切れ、 山道が続いていた。
とんでもない山奥だ。だんだん頭 ぼーとしてきた。まずいなあ。
これから無人区間だし 。でもテントに戻るころには回復してきた。

これなら行けるやろ。9時出発。 空は快晴、無風。川は伏流水で音がない。
そう、物音がない。不気味だ。空はこんなに明るいのに。
その昔 廃鉱で感じた、乾いた空気を感じる。とっとと行こう。 

   1.5hで5km進む。快調やん。しかし本番はここから。 左手はるか上に
見えていた道が近付いてきた。そして 坂がいよいよ厳しくなる。

突然、足に力が入らなくなる。
やっばー、ハンガーノックだ!ろくにものが食べられんうえにこの重労働だ。
そりゃエネルギーが切れるわな。腹の調子どころではない。
手持ちの果物を食い尽くし、食パンをむさぼり食う。ふう、一息つけた。
あぶないあぶない。 さ、登ろう。いきなり14%の急坂だ。
ねこバスを50m も押し上げればもう息切れ。冗談とちゃうぞ、これ。
 でも、もう登りだした。ここで引いては男がすたる。    

50mずつ必死にねこバスを押し上げる。見えているほんにそこまで行くのが
長いったらありゃしない。どう にか最初の急坂クリア。先はまだまだまだ長い。

 ふと、前から軽トラが降りてきて、横で止まる。おやじはねこを見て
感心することしきり。軽トラのエンジン音が谷底深くに消えてから、ふと思う。
今のをヒッチハイクして古座に脱出した方が良かったか?
だいたいこの道を通る車なんて日に1,2台とかだろう。

しかしすでにアドレナリンが出まくっていて、
頭の中には峠にたどり着くことしかない。ああ、自転車乗りの悪い癖だ。
 そこからはよく覚えていない。どれくらい登ったやろか、
ふと前方に峠の切り通しが見えた。やった、ねこバスで登ったぜえ!
見渡す限り山山山。紀伊半島最深 部だ。しかし体力をかなり消耗していて
記念撮影などする気力はすでになし。下りだ。少しは楽に・・・。   

 甘かった。手足がしびれてきた。ふんばりがきかない 。
ねこバスはどんどん前に走る。もしねこバスが転落しても
拾いにいくことは不可能な急斜面が右手に続く 。
しびれを我慢し50mづつ、休み休み下る。腹の調子も雲行きあやしい。
朝から薬を飲んでいるが、消耗が激しく追い付かないようだ。
腹までしびれてきて、腹筋 に力が入らない。果物は食い尽くした。
あとは固形物 ばかりだが、食わなければ動けなくなる。
食パンを無理やり腹に押し込む。とりあえず民家のあるとこまで 
下らなければ。状況は極めてよろしくない。ビバークするだけの
体力と気力があるかも疑わしい。とにかく 集落まで・・・。
そうすれば食いもんも何とかなるやろし、最悪救急車も呼べるはずだ・・・。

 どれくらい下ったか、しかし景色はちっとも変わらん 。
はよ着いてくれ〜。たのむから。おねがい・・・。 その時だ。
本日2台目の車(軽1BOX)が後ろから現れた    。天の助けー!!
ねこバスごとヒッチハイクに成功。 熱いお茶とあんぱんをもらうと少し落ち着いた。
しかし、手足腹のしびれは止まらない。道は果てしなく山の中のぐねぐね1車線路。
だんだん調子が悪くなってきた。1.5hほど走ってようやく村の中心部。
歩いたら あと2日は民家もろくにない山の中か・・・。 

診療所でおろしてもらい、とりあえず診察してもらう 。
かなり弱っているようで、点滴をうちこまれる。これも生まれて初めて。
きー、くやしー。でも効果抜群 。1本うったらかなり回復した。

あー、助かったー。 ここで野宿するとまた壊れそうだし、
医者に「しばらくおとなしくしてな」、と言われたので、
今日はおとなしく宿をとる。 さて、明日以降どうしよう。
留守電を聞くとザックが 直っているらしい。もうねこバスはたくさんである。 
   近郊によさげなキャンプ場はないし、宿に連泊すると 金がもたん。
現在地は紀伊半島。尾鷲基地(おやじさま )の射程距離だ。
ここはひとまず尾鷲に撤退しよう。連絡をとり、明日回収決定
。宿まで歩き部屋にころがる 。あー、生きて山奥から脱出したー。
あー、でもま〜 た冬休みだー。まーしゃーないかー。

 というわけで、翌日回収され実家まで
連れてこられておとなしくしております(1/23現在)。
1週間かかって ようやく症状もおさまった。かなり身を削っていたみたい。やれやれ。

 何がくやしいかと言えば、おやじさまに
「俺まだ点滴1ぺんもうったことないからな」
と、のたまわれること 。きー、くやしー。
生水にあたるなんて野性児の恥や 、まったく〜。 

ねこぐるま、完全に甘くみてました。あんなつらいもんやとは
夢にも思わんかった。過積載バックパッカー なんてかわいいもんです
。ほんまに。2度とやらんぞ >ねこ。

もし荷物満載のねこ押して紀伊半島縦断した 
人がいたら尊敬します。徒ほほな日本一周よりすごいよ、それは。
あ、このねこバスは実家の畑で第2の人生を送ります。
かくしてねこな旅は3日の幻と消えるのでありました。ちゃんちゃん。

 さ、調子も戻ってきたし、ザックも直ったので週明けには
もとの徒ほほな旅人に戻ります。徒ほほにゃやっぱり徒歩がいちばんですわ。

さ、待ってろ四国!  

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